Report7<SURVEY>

日本のケーブルテレビ 2023 
総接続世帯、多チャンネル、インターネットほか動向 《全国調査 第63弾》

弊社では平成2年(1990年)から毎年3月期と9月期の年2回、多チャンネル放送サービスを行うケーブルテレビ局加入世帯数調査を行っていたが、調査を月刊放送ジャーナル誌(2021年休刊)から放送ジャーナルレポートに移行し、年一回の調査とし、このほど令和4年度(2022年)9月期の第63弾調査結果がまとまった。結果詳細は弊社発行「旬刊CATVジャーナル 増刊号」にて報告するが、この放送ジャーナルレポートにおいては要約版として掲載する。本調査はケーブルテレビ事業者に対するアンケートによるもので、基本的にケーブルテレビ事業者の回答がすべてである。未回答のものもあり、ごく小規模事業者は対象外となっている。また、今回は新規調査項目として、ローカル5G、地域BWA、ケーブルスマホといった、昨今普及しつつある無線系サービスに関しての調査も行っている。(編集部) 

総接続世帯数2727万、多チャンネル744万世帯

 調査対象となっている多チャンネル放送サービスを行うケーブルテレビ局の数は前回同様で341局となった。今回の対象局における許可エリア内総世帯数は約5488万世帯となり、前回(前年9月期)より1.8%の増加、ホームパス(ケーブル敷設工事完了エリアの接続可能世帯数)は約5216万世帯で2.0%の増加、総接続世帯数(電波障害対象施設なども含む全ての接続世帯数。再送信サービスだけを受けている世帯も含む)は約2727万世帯で3.7%の増加となった。これら増加の要因としては複数のケーブル局でエリア拡張があったこと、また、若干ではあるが集計上の要因もある。一方、多チャンネル契約世帯数は約744万世帯と1.8%の減少。4年連続で減少が続いている。
 ホームパスに対する総接続世帯数、多チャンネル契約世帯数の比率(加入率)は、総接続世帯数が52.3%と前回よりも0.8ポイント増加しているものの、多チャンネル契約世帯数は14.3%で前回より0.6ポイント減少している。
 近年、順調に数字を伸ばしているケーブルインターネットサービスの契約世帯数は約819万世帯で4.7%増とさらに伸ばした。前回調査時から、ケーブルインターネット契約世帯数と多チャンネル契約世帯数が逆転し、今回はネットが約75万世帯上回る結果となった。ケーブル電話の方であるが、約652万世帯0.2%減と2年連続の減少となった。

 多チャンネル比率は10年ほど前から減少傾向
    インターネットサービスが増加を牽引

 接続総世帯数と多チャンネルサービス推移に関するグラフを以下にまとめた。色のついた面グラフがそれぞれの実数で、折れ線グラフは対ホームパスにおけるそれぞれの比率を表している。これをみると平成9年以降24年くらいまでは総世帯数の伸び率も順調であり、多チャンネルも右肩上がりで推移している。以降は横ばいとなり、ここ数年は減少傾向となる。一方で対ホームパスの比率をみると、実数がまだ増加傾向にある平成15年あたりですでにピークを迎えており、その後、横ばいから減少に入っている。

総接続世帯数と多チャンネルの推移

 下のグラフは、多チャンネル、インターネットに加え、ケーブル電話も含めた3サービスの推移を比較したものである。10年前を見るとインターネット契約者数は多チャンネル契約世帯数に対して6~7割程度、ケーブル電話は5割程度だったが、その後、多チャンネル契約者数が減少傾向なのに対し、インターネット、ケーブル電話が数字を伸ばした。近年の固定電話離れの影響もあり、ここ2年ではケーブル電話の契約者数は減少している。

3サービスの推移

 普及しつつある無線系サービスの動向は

 本調査では前回より、新たなアンケート項目を設けている。近年、ケーブルテレビ事業者に普及しつつある無線系サービスである地域BWA(Broadband Wireless Access)、ケーブルスマホ、ローカル5Gに対する各社の取り組みの状況である。
 調査についてはそれぞれのサービスについて、「提供している」「予定がある」「検討中」「未定」の4択形式で、今回、回答があったのは全341局中170局。結果を次ページのグラフに記した(パーセンテージは、回答があった局における比率)。

地域BWA
ケーブルスマホ


 まず、「提供している」という回答が多かったのが地域BWAで37.3%、ついでケーブルスマホがほぼ同等の37.1%。地域BWAは「予定がある」、「検討中」を含めると47.9%、同じくケーブルスマホは42.9%となった。前回よりも回答数が増えたため比率は若干落ちているが、件数はどちらも増えている。ケーブルスマホはサービス提供が個人ベースであることなどもっともハードルが低い。地域BWAはケーブルスマホほど参入障壁が低くないものの、(一社)日本ケーブルテレビ連盟の導入促進もあり、地域の自治体とニーズが合致すれば、事業も展開しやすい。一方ローカル5Gは2019年末に制度化されてから、まだ間もなく、インフラ構築自体がこれからというサービスであるため、前記の2サービスに比べ、まだ「提供している」割合などは少ないものの、前回の1%から今回5%と徐々にではあるが提供する局は増えている。「予定がある」までを含めれば、前年と同様の9%であるが、件数自体は増加の傾向にある。

ローカル5G

 個性豊かな、各局独自の他事業展開

 今回の調査では、近年普及しつつある無線系のサービスに加え、新たな事業・サービスへの具体的な取り組みについて質問を行った。従来型のケーブル局のサービスが設備を敷設して、コンテンツを供給するというものだとすれば、そこから一歩踏み込んだ個性豊かな事業が数多く見られた。基本的には地元と密着・連携した事業が中心だが、BWAなどの無線系インフラを活かしたものから、従来型サービスの枠を超えたものまでさまざまである。回答のなかから、主だったものを挙げてみると…。
◆地域おこし、地域プロモーション…
・地域プロモーション事業・指定管理事業(須坂市子育て就労総合支援センター)[長野県・Goolight]
・地元応援アプリ「いわみる」の運用[島根県・石見ケーブルビジョン]
・地元自治体との協動によるSDGs地方創生事業展開(2016年~)/地域の歴史、伝統、文化をIP(財産)として捉え、コンテンツ化、新たな価値の創造[福井県・丹南ケーブルテレビ]
・地域の伝承、偉人の掘起し[大分県・杵築市]
◆防犯・地域安全…
・「安全・安心123ch」(地デジ123chで防災・防犯・交通情報等提供/ライブカメラ映像も視聴可)、「CCNetアプリ」(ポイント還元、契約情報確認など)[愛知県・中部ケーブルネットワーク]
・公共交通のコールセンター業務[長野県・佐久ケーブルテレビ]
・射水市とIoT利活用実証事業(積雪量、水位監視、保育室の温湿度監視他)[富山県・射水ケーブルネットワーク]
◆電力・エネルギー…
・地域電力小売取次[島根県・石見ケーブルビジョン]
・太陽光発電事業[徳島県・ケーブルテレビあなん]
◆地域生活支援・文化事業…
・行政によるドローンを使用した買い物支援サービスの一部業務を受託。ハイブリッドキャストを用いたテレビから商品を注文できるサービスの提供[長野県・伊那ケーブルテレビジョン]
・温泉施設、道の駅、美術館、キャンプ場指定管理事業[徳島県・ケーブルテレビあなん]
・学校関係の運動会、文化祭のDVD作成[佐賀県・佐賀シティビジョン]
◆地域IT支援…
・塩尻市内全公民館80ヶ所へフリーWi-Fi設置[長野・テレビ松本ケーブルビジョン]
◆地域スポーツとの連携…
・男子ハンドボール日本リーグ「富山ドリームス」のパートナースポンサー[富山県・能越ケーブルネット]
・地域密着の一環として、地元サッカーチーム(SS伊豆)とのスポンサー契約締結[静岡県・伊豆急ケーブルネットワーク]
・地元出身のアスリートを正社員雇用し、地元企業で応援する「西濃から世界へ!アスリート応援団」[岐阜県・大垣ケーブルテレビ]
◆その他…
・電子書籍「星の砂文庫」、コミュニティFM[栃木県・宇都宮ケーブルテレビ]
・ハウスクリーニング事業[東京都・東京ベイネットワーク]
・フィットネスジム[岡山県・倉敷ケーブルテレビ]
・物販、コンテンツ事業、映画事業他[秋田県・秋田ケーブルテレビ]
・映画事業(興行・配給・宣伝)[愛知県・スターキャット・ケーブルネットワーク]
・コミュニティFM事業を展開[兵庫県・BAN-BANネットワークス]
・家電販売[千葉県・広域高速ネット二九六]

 ここで紹介しきれない事業として、無線系サービスと関連性が高いスマホリペア、スマホショップ・教室等や、農業との連携など、各社特徴のある新分野への事業展開がみられた。

各ランキング、ジェイコム系が上位
 インターネット上位社は多ch上回る

 各項目の契約世帯数のランキングを表に記した。トップ10社では上位は大きな変動はないが、各項目若干の入れ替わりがある。接続総世帯数は上位10社はすべて前年比で増加している。同様にインターネットも上位10社中9社が前年比増加となった(1社回答無し)。一方、多チャンネルでは、前年増となったのはZTV(3.7%増)のみ。また、ケーブル電話で前年増となったのはベイ・コミュニケーションズ(0.6%増)と中部ケーブルネットワーク(0.2%増)の2社となった。なお、※印のものは今回の調査で回答が得られなかったため、前回調査時等の回答をそのまま流用している。

ホームパス

1.オプテージ       7,575,692 世帯
2.ジェイコムウエスト   5,716,100
3.ジェイコム東京     5,104,500
4.ジェイコム埼玉・東日本 2,950,200
5.ジェイコム湘南・神奈川 2,611,000
6.ジェイコム千葉     2,339,400
7.ジェイコム九州     1,726,100
8.イッツ・コミュニケーションズ  1,178,766
9.スターキャット・ケーブルネットワーク  1,079,116
10.ベイ・コミュニケーションズ   934,900

総接続世帯数

1.ジェイコムウエスト   3,816,800世帯
2.ジェイコム東京     3,547,600
3.ジェイコム湘南・神奈川 1,727,900
4.ジェイコム埼玉・東日本 1,711,600
5.ジェイコム千葉     1,425,000
6.ジェイコム九州     1,136,700
7.イッツ・コミュニケーションズ  985,790
8.オプテージ        957,776
9.ベイ・コミュニケーションズ  868,100
10.ジェイコム札幌      555,700

多チャンネル契約世帯数

1.ジェイコムウエスト   875,700 世帯
2.ジェイコム東京     870,500
3.ジェイコム湘南・神奈川 614,100
4.ジェイコム埼玉・東日本 533,200
5.ジェイコム千葉     415,000
6.オプテージ       283,977
7.ジェイコム九州     222,900
8.イッツ・コミュニケーションズ  142,925
9.ベイ・コミュニケーションズ  127,722
10.ZTV         123,864

インターネット契約世帯数

1.ジェイコムウエスト  1,012,900 世帯
2.ジェイコム東京     931,000
3.ジェイコム湘南・神奈川 587,800
4.ジェイコム埼玉・東日本 564,100
5.ジェイコム千葉     433,700
6.ジェイコム九州     317,100
7.イッツ・コミュニケーションズ  282,000
8.ベイ・コミュニケーションズ  238,507
9.近鉄ケーブルネットワーク ※ 154,060
10.スターキャット・ケーブルネットワーク  148,867

電話サービス契約世帯数

1.ジェイコムウエスト   887,900 世帯
2.ジェイコム東京     729,400
3.ジェイコム湘南・神奈川 534,400
4.ジェイコム埼玉・東日本 493,800
5.ジェイコム千葉     372,400
6.イッツ・コミュニケーションズ  197,368
7.ジェイコム九州     196,600
8.ベイ・コミュニケーションズ  155,531
9.近鉄ケーブルネットワーク ※ 137,572
10.中部ケーブルネットワーク  114,168