Report5<SURVEY>

日本のケーブルテレビ2022
総接続世帯、多チャンネル、
   インターネットほか動向
《全国調査 第62弾》

 弊社では平成2年(1990年)から毎年3月期と9月期の年2回、多チャンネル放送サービスを行うケーブルテレビ局加入世帯数調査を行っているが、令和3年度(2021年)9月期の第62弾調査結果がまとまった。従前は月刊放送ジャーナル誌にて結果を掲載していたが、休刊にあたり今回より結果詳細を弊社発行「旬刊CATVジャーナル」増刊号にて、そして、この放送ジャーナルレポートにおいては要約版として報告する。
 この調査はケーブルテレビ事業者に対するアンケートによるもので、基本的にケーブルテレビ事業者の回答がすべてである。未回答のものもあり、ごく小規模事業者は対象外となっている。また、今回は新規調査項目として、ローカル5G、地域BWA、ケーブルスマホといった昨今のケーブルテレビ事業者における新たなサービスに関する調査も行っている。(編集部) 

総接続世帯数2629万
多チャンネル757万世帯

 本調査は従来、半期ごとに行っていたが、今回は1年ぶりの調査となった。対象となっている多チャンネル放送サービスを行うケーブルテレビ局の数は前回より3局減って341局となった。これは、㈱ちゅぴCOMふれあいと㈱ちゅぴCOMひろしまの合併ほかによる。今回の対象局における許可エリア内総世帯数は約5,391万世帯となり、前回(前年9月期)より0.3%の減少、ホームパス(ケーブル敷設工事完了エリアの接続可能世帯数)は約5,112万世帯で0.7%の減少、総接続世帯数(電波障害対象施設なども含む全ての接続世帯数。再送信サービスだけを受けている世帯も含む)は約2,629万世帯で2.1%の減少となった。多チャンネル契約世帯数は約757万世帯と0.3%の減少。3年連続で減少が続いている。

 ホームパスに対する総接続世帯数、多チャンネル契約世帯数の比率(加入率)は、総接続世帯数が51.4%と前回よりも0.8ポイント減少しているものの、多チャンネル契約世帯数は14.8%で前回より0.1ポイントと僅かではあるが増加している。
 一方で、ケーブルインターネットサービスの契約世帯数は782万世帯で前回よりも3.0%増加、前回では初めて多チャンネル契約数に追いついたが、今回は25万世帯、約3%上回った。対してケーブル電話の方であるが、約653万世帯0.9%減と初めて前年を下回った。

順調に伸びる
  ケーブルインターネット
ケーブル電話サービスは

  横ばい状態

 本調査では平成23年よりインターネット加入世帯数とケーブル電話契約世帯数の調査を開始している。この2サービスと多チャンネル契約世帯数との比較の推移を以下のグラフにまとめた。調査開始当初、インターネット契約世帯数は多チャンネル契約世帯数に対して6割程度、ケーブル電話加入世帯数は5割程だった。インターネットはその後、順調に契約世帯数を伸ばし、令和2年には多チャンネルを抜き、直近では3.3%上回っている。ケーブル電話も27年ごろまでは契約数の伸びは順調でインターネットと肩を並べるほどまで伸びていたが、こちらに関しては30年あたりから伸びは止まってきており、多チャンネルを抜いたインターネットに対し、直近で対多チャンネル比86%となっている。ただし、ケーブル電話に関しては、近年、固定電話そのものに対する需要が減り、NTTなども含めた全契約件数は減少の一途をたどっていることもあり、そういう意味では現状を維持できているとも見ることができる。

3サービスの推移

多チャンネルは
  動画配信サービスの影響も

 平成8年からおよそ25年間の多チャンネル契約世帯数と総接続世帯数の推移をグラフに表した。平成15年ごろまでは双方とも年間2桁の伸びで推移しており、その後、若干伸び幅は縮まりながらも、平成23年ごろまでは堅調に増加している。その後、総接続世帯数は伸び率1~2%台とそれまでに比べて減速しているものの、ゆるやかながらおおむね増加の傾向にある。 
 一方、多チャンネルサービスは26年の約802万世帯をピークに以降は伸びが止まり、横ばいから緩やかな減少傾向に入ってきている。26~27年といえば、ちょうど海外の動画配信サービス大手「ネットフリックス」が日本に上陸した時期である。その後、同社をはじめ動画配信サービスが契約者数を劇的に伸ばしてきており、これが少なからず影響を与えていると思われる。実際にはケーブルテレビの多チャンネルサービスと動画配信サービスは、内容的には完全に競合するわけではなく、共存し得るものではある。しかし、動画配信におけるオンデマンド型の視聴スタイルが一部の視聴者層の間では定着しつつあり、個人の限られた視聴時間の中での優先順位という意味では、多チャンネルサービスの立ち位置は、今後ますます厳しくなっていくかもしれない。

総接続世帯数と多チャンネルの推移

ケーブルテレビの
  新たなサービスの行方は

 本調査では、今回新たなアンケート項目を設けた。近年、ケーブルテレビ事業者における新サービスとして取り組みが始められている、地域BWA(Broadband Wireless Access)、ケーブルスマホ、ローカル5Gに対する各社の状況である。調査についてはそれぞれのサービスについて、「提供している」「予定がある」「検討中」「未定」の4択形式で、回答があったのは全341局中141局。結果をグラフに記した(パーセンテージは、回答があった局における比率)。
 まず、「提供している」という回答が最も多かったのがケーブルスマホで4割を超える41%。「予定がある」、「検討中」を含めると46%と半数近い結果となった。ケーブルスマホの場合は、すでに整備されているインフラを有効活用できるということ、また、個人対象のサービスであるということなどから、サービス開始までのハードルが比較的低く、このため予定がある、検討中の比率がもっとも小さい。

 地域BWAは、「提供している」の割合はケーブルスマホを若干下回る38%であるが、「予定がある」「検討中」までを含めると5割を超える52%となった。こちらのサービスの場合は、地域の自治体などと連携した事業展開が求められるため、サービス検討から開始までの間にタイムラグがある。

ケーブルスマホ
地域BWA
ローカル5G

 一方、ローカル5Gであるが、上記の2サービスに対して、まだ、インフラの構築自体がこれからのものであるため、グラフのように「提供している」と「予定している」を合わせても9%と1割に満たない。「検討中」を含めて34%と全体の3分の1程度であり、ローカル5Gにおいては地域BWAのような地場産業や自治体との連携はもとより、ケーブル4K・8Kといった将来型のサービスも視野に入っており、これが本格的に普及すればケーブル業界も新たな局面を迎えることになる。ただ、現状ではまだ、環境からくる電波到達の検証をはじめ様々な課題があるうえ、前段階として地域BWAが位置付けられているなど、普及はまだ時間がかかる。

近い将来の「ラスト1マイル」
  は無線アクセスか

 かつて、ブロードバンドネットワーク普及の黎明期に「ラスト1マイル」問題が取りざたされていた時期があった。有線によるラスト1マイルは、設備工事が必要であり、コスト高や煩雑さがネックであったものの、セキュリティや安定性、速度などの面で無線に比べてメリットが上回り、現在ケーブルテレビは基本的には各契約者まで有線の回線を敷設するのが一般的である。対して近年の無線アクセスにおいて、5G通信のようなこれまでの速度や安定性におけるデメリットを解消し、かつ移動体アクセスができるという優位性のあるインフラの登場で状況が変わってきている。通信事業者が着々と5G以降への高速通信の整備を進めているのに対し、ケーブル事業者も手をこまねいているわけではない。ケーブルテレビ連盟は、将来的に無線をケーブル局の柱とするべく、2023年までを、地域BWAおよびローカル5Gの集中整備期間と位置づけ、こうした取り組みに対し積極的に推進していく全国展開を行っている。これらの競争による相乗効果は普及を一気に進める可能性を秘めている。ラスト1マイルが無線になる日も近いかもしれない。

各ランキング、ジェイコム系が上位
インターネット上位社は多ch上回る

 各項目の契約世帯数のランキングを表に記した。ホームパスはトップがオプテージだが、他は上位はジェイコム系が占めている。総接続世帯数100万以上は6社で、いずれもジェイコム系である。多チャンネルとインターネットを比べてみると、上位10社中9社が双方でにランクインしている。このうちインターネット契約数が多チャンネル契約者数を上回っているのはトップのジェイコムウエストをはじめ8社で、多チャンネルが上回っているのはジェイコム千葉1社のみである。なお、※印のものは今回の調査で回答が得られなかったため、前回の回答をそのまま流用している。

ホームパス
総接続世帯数
多チャンネル契約世帯数
インターネット契約世帯数
電話サービス契約世帯数